事例:上司との人間関係

ある団体の管理職は、天下りでやってきた役員との関係に苦しんでいました。役員室に呼ばれるたびに、強い口調で、叱責されたり否定されたりするので、1か月もすると、役員室に呼ばれるだけで大きな恐怖を覚えるようになりました。

そんな状態では、今までならできた簡単な報告もきちんとすることができず、気の短い役員のさらなる怒りをかってしまう悪循環ができていました。半年後には、うつ症状が大きくなり、ついには会社に出社できなくなりました。

GUM01_PH04023少し休んで、心療内科で処方された薬を飲んでいるうちに、多少、回復したことで会社には出社できるようになりました。もともと優秀な人物であり、なんとかこの問題を解決しようと、役員から干されている間に、夜学で心理学を学び、心理的苦痛の解決を試みていました。しかし、役員への恐怖感情はなかなか消えず、辛うじて会社にいけているという状況が半年近く続いていました。

そんな状態でコーチングを受けに来た彼に教えたのが、レゾナンス呼吸です。その役員への対人恐怖はかなり深刻だったのですが、役員室に入る前に必ずレゾナンス呼吸で平常心を作ること、役員が話しているときに、知られないようにレゾナンス呼吸を続けること、役員室から出たあとに、そのストレス反応を解消するためにレゾナンス呼吸を行うことの3つを徹底的に指導したところ、1ヵ月後には、役員室に呼ばれることにそれほど抵抗がなくなっていたそうです。

定期的にコーチングも行っていましたが、半年経ったころには、役員に対して、きちんと自分の意見を言えるようになるまで回復していました。そのときには、役員が、自分の意見をどう評価しようと、平常心でいれば、自分は大丈夫、たとえ降格させられてもやっていける、という強い感覚が生まれていたそうです。

面白いのは、そんな毅然とした対応ができるようなるにつれ、役員の対応が少しずつ変わってきたという事実です。平常心で臆病にならずに、自分の意見を伝えることで、彼に対する役員の評価が変わったのです。

彼は今でも役員の下で働いています。決して好きでもないし、尊敬もできないそうですが、平常心メソッドを習得したことで、役員の機嫌に引っ張られることなく、常に自分をしっかり持つことができるようになったと報告をくれています。

拙書『「ここ一番に強い自分」は科学的に作り出せる』からの一部引用