事例:男子プロボウリング
この男子プロボウラーとは、プロ転向直後から、かれこれもう7年目の付き合いになりました。現在、5年連続でシード権を維持し、プロボウリング協会から「永久A級プロ」の認定を受けています。


ある若手プロボウラーは、プロとして初めて参加する公式戦「千葉オープン」の予選前日、こう呟きました。

「俺は恥をかくためにプロ選手になったのか・・・」

聞くと、この2週間ほど調子を崩していて、前週の非公式戦でもイージーミスを連発してしまい、予選敗退してしまったそうです。また、試合前日の練習でもなかなか調子が上がらず、明日の本戦予選を突破する自信が全くない、と話してきました。

EL175_L彼の良いところは、とても真面目で、一生懸命なところです。座右の銘は「努力」。メンタル指導を受けるために、彼は毎回遠方から2時間かけて、私の事務所にやってきます。しかし、そんな真面目な性格が、ときには自分自身を追い詰めてしまうのです。

そんな彼に、私は「明日は明日の風が吹く」というアドバイスだけ送り、今晩は、ただひたすら丁寧に、平常心メソッドを行うように指導しました。少なくても平常心メンタルトレーニングをやっている間は、明日のことは考えられないからです。

結論からいえば、彼はその翌日、まず、シード権のない選手が出場する選抜予選を突破(125名中40位まで)し、シード選手が登場する本戦予選(120名中48位まで)、さらには準決勝進出(48名中28位まで)を果たし、シードプロが上位を独占する中、15位という成績を残しました。

大会直後は、あと少しで、12位までの決勝進出を逃したことを残念がっていましたが、しばらくすると、そうそうたるシードプロと互角に戦えたことが、大きな自信につながったし、同時に「プロになったんだ!」という実感がふつふつと湧いてきたそうです。

彼は次の公式戦「ジャパンオープン」でも、シードプロに交って14位という成績を残し、さらに自信を深めていました。

彼がはじめて私のメンタル指導を受けにやってきたのは、公式戦の出場枠をかけた「トライアル予選」の3週間前でした。その「トライアル予選」で上位に入らないと、「選抜予選」に出られない。でも、このままでは実力を発揮できる自信がない、前回の「トライアル予選」も緊張してだめにしてしまった、とのことで、知人の紹介でやってきたのです。

EL171_L時間が限られていたので、彼用のメニューを作成し、ひたすら当日まで、平常心メンタルトレーニングを実践するように指示しました。精神論やプラス思考などは一切しませんでした。

「トライアル予選」の当日は、朝からひどく緊張してしまい、いきなり「130」という、プロとしてはありえないスコアを叩いてしまったそうです。アベレージが210-220というところで戦っているプロの世界では、このスコアはほぼ致命傷であり、仲の良い先輩プロからも、次回がんばろう、となぐさめの言葉をもらったそうです。

それまでの彼だったら、そこで終わりでした。しかし、私のアドバイスを信じて、130を叩いてしまった原因を探したりせず、ひたすら平常心メソッドを続けたところ、後半に大爆発して、終わってみると、比較的ゆうゆうと、その「トライアル予選」を通過し、公式戦の選抜予選への出場を決めたのでした。そして、あれよあれよという間に、準決勝まで進出し、15位という過去最高の公式戦順位を残したのです。

拙書『「ここ一番に強い自分」は科学的に作り出せる』からの一部引用