アドレナリンの神経作用

「火事場の馬鹿力」という言葉があるとおり、人間も、大きなストレスがかかるような緊急時には、通常発揮できない能力が発揮できるようになります。s-CX110_L

例えばゴルフでは、優勝争いなどの緊迫した状況になると、いつもよりボールが飛んでしまうという現象が起こることが知られています。

このような場合、スポーツ選手のインタビューなどでは、「アドレナリンが出すぎた」などと表現されますが、アドレナリンは、生理ストレス反応として分泌されるホルモンのひとつです。ストレッサーを感じると、魚も、鳥も、ネズミも、シマウマも、そして人間も、このアドレナリンが分泌されるのです。そして、それが全身に作用して、いつも以上の力を出すことができるようになります。

生理学や神経学の研究から、このアドレナリンは、体にだけ作用するのではなく、脳にも作用することがわかっています。つまり、ストレスは、運動生理機能だけでなく、人間の思考や感情といった心的機能にも影響を与えるのです。

多量のアドレナリンは、あなたを過度の興奮状態に陥らせ、心臓がドキドキしたり、手に汗をかいたり、胃が締めつけられたりといった生理反応を起こすだけでなく、不安や緊張を煽り、落ち着いて冷静に考えることをできなくさせます。

心理学の実験でも、アドレナリンを注射された被験者は、コメディー番組や悲劇的な映画をみて、普段以上に大笑いしたり、大泣きしたりすることが分かっています。アドレナリンは、良い意味にも、悪い意味にも、感情を増幅するものなのです。

プレッシャーのかかる場面で、「この試験によって人生が決まってしまう…」「失敗したら、もう終わりだ」といったような、普段では考えないようなマイナス思考に陥ってしまうことがあるのも、アドレナリンが多量に分泌されていることが関係しています。

前章でも説明した「考えすぎることの悪循環」も、このようなアドレナリン過多なストレス状態から生み出されているといえます。これまで、性格分析やプラス思考の本を読んで、そのときは「前向きに考えればいいんだ」と納得できたとしても、いざ、本番となると、その通りに考えることができなかったのは、アドレナリンのためだとも言えるのです。

拙書『「ここ一番に強い自分」は科学的に作り出せる』から